平成23年6月10日(金)  目次へ  前回に戻る

 

ああ。苦しい。

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元の王族・剛哈剌咱(ゴウハラサ)王はあるとき馬から落ちた。                                                                 

まわりの者に助け起こされたのだが、助け起こしてみて、まわりの者は驚いた。

両眼黒睛倶無、而舌出至胸。

両眼の黒睛ともに無く、舌出でて胸に至る。

白目を剥いてしまい、瞳が無くなってしまった。さらに、舌がびろ〜んと胸に達するまで延びていたのだ。

宮中の医師たちが総出で治療したが治らない。

最後に、乃也里可温(ナイヤルカオン)のひと、広恵司の聶只児(ジョウキル)という者が呼ばれてきた。

聶只児は症状を確認すると、早速熟れた手つきで

剪去之。

剪(きり)てこれを去る。

舌をちょきんと切ってしまった。

すると、

頃間復生一舌。

頃間にまた一舌生ず。

すぐにまた次の舌が生えてきた。

聶只児は

亦剪之。

またこれを剪る。

またこれもちょきんと切った。

するとまた次の舌が生えてきた。

聶只児は

「これが真舌(まことの舌)でござります」

と解き明かしながら、

又於真舌両側各去一指許。

また真舌の両側においておのおの一指許りを去る。

今度は「まことの舌」の両側を、指一本の太さぐらいの幅、ぎじぎじと切り取ってしまった。

その上から血止めの薬を塗布し、ようやく癒えたそうである。

ただ、眼球の方はそのままになってしまった。

時元統癸酉也。広恵司者、回回之為医者隷焉。

時に元統癸酉なり。広恵司なるものは回回の医を為す者の隷なり。

これは元統の癸酉(みずのと・とり)の年(1333)のことである。ちなみに「広恵司」というのは、イスラム医師の弟子のことである。

ちょうど鎌倉幕府がホロンだ年です。

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「南村輟耕録」巻九より。

回回の良医ももはや無し。彼ら(※)の二枚の舌を切りとる術はもうあるまい。ちなみに「二枚舌」は「両舌」の意で、これは仏教用語。「無量寿経」に言語の罪として「両舌・悪口・狂言・綺語」と並べられるに出る語であり、この王子さまの症状とは関係ございません。ので念のため。

 

※「彼ら」とは誰でしょう? 次のうちから選べ。(複数回答可)

 @ マスゴミ A ○○家ども B 公○員 C ○下○経塾 D その他もろもろ

 

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