平成23年1月21日(金)  目次へ  前回に戻る

チャイナ名物料理ご紹介の第二回だよ。今日は「鉄脚」「鵞掌」です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

天津あたりで小さな鳥が捕れる。脚の爪が黒いので

「鉄脚」

と呼ばれる鳥である。

この鳥を炙ったものは

味鮮爽口。

味鮮にして口に爽なり。

味ははっきりして、口に清々しい。

そのため、酒の上がり(「下酒物」)に最もよろこばれる。

では、作り方をご紹介しよう。

この鳥は群れ飛んでいるので、網をつかって一度に何羽かを捕らえることができますし、鳥料理はまず毛をむしるところから始まるのですが、この鳥については、毛むしりから炙りまでが一度にできてしまう。

まず、

掘地作一坑。

地を掘りて一坑を作る。

@地面に穴を掘りますのじゃ。

そこに炭を入れて火をおこす。

用火熾紅、将鳥従網傾入、以物覆之。

火の熾(さか)んに紅なるを用いて、鳥を将(ひ)いて網に従い傾け入れ、物を以てこれを覆う。

Aよく燃えさかったところで、鳥を入れたままの網をその穴に斜めに入れ、穴の上から何かで覆っておくのじゃ。

網を斜めに入れる理由は、網の中に火で直接炙られる空間と火から少し離れた空間とを作るためである。

小半刻もしてから覆いを取り網を穴から出しますと、もう、きれいに羽がむしられた「炙り鉄脚」が出来上がっているのである。

けだし、この鳥は、網の中で下から熱され、

於内乱飛相触、熱気交加、互相撲打、毛自尽脱。

内において乱れ飛びて相触れ、熱気こもごも加わり、互いに相撲打して、毛自ずからことごとく脱するなり。

網の中で乱れ飛んでお互いにぶつかりあい、これに熱気が加わって、お互いではたきあっているうちに、毛がすべて抜けてしまうのである。

そして、だんだんと弱って行き、火にこんがりと焼かれていく、という寸法なのだ。

―――普通に焼き鳥にすればいいのに・・・。何をやるにも何かしら「残酷」の香ばしい匂いがするのが如何にもチャイナっぽいところです。

明の時代の宦官は、たいへん「鵞掌」(ガチョウの「脚の裏」)が好んでおった。

ただ、その足に厚みがないのは味気ないので、足の裏を肥らせる工夫をしていたのであった。

これも簡単です。

@地面に穴を掘って中で火を熾し、穴の上に瓦様のレンガを置く。

焼之近赤、置鵞於上。

これを焼きて赤に近くなして、鵞を上に置く。

A熱せられてレンガが赤くなってきたら、ガチョウをその上に置く。

熱いです。しかし、ガチョウは飛べませんし、ご存知のように歩くのもよちよちしているので、レンガの上からすぐには逃げられない。

鵞立脚不住。

鵞、脚を立てて住(とどま)らず。

ガチョウは(熱さを避けようと)伸び上がるように脚で立って、(レンガの上を)あちこち歩き回る。

レンガから飛び出ようとしたら押し戻してやる。

ガチョウの足はたちまち、

一身血脈、尽注於掌、其掌愈蹀愈厚。

一身の血脈、ことごとく掌に注ぎ、その掌いよいよ蹀(ふ)みていよいよ厚し。

体中の血がすべて足の裏に集まって足の裏は大きく水ぶくれしはじめる。レンガの上を歩き回れば歩き回るほど、膨れ上がるのだ。

やがてガチョウが動かなくなると、足は分厚く膨らみ、程よく焦げて食べごろになる。

宦官のみなさまは、

適於口、忍於心矣。

口に適わしく、心に忍ばるるかな。

「口には旨いが、心ではかわいそうでたまりませんなあ。」

と言いながら食べておられたのだそうである。

宦官だけではない。

宮中にも出入りしていた謙光という高僧は、

老僧無他願。鵞増四脚、鼈著両裙足矣。

老僧他に願い無し。鵞の四脚を増し、鼈の両裙足を著せんかな。

「この老和尚には他にはもう何の願い事もございませんがな、ただ、ガチョウの足があと四本増えて(たくさん足の裏が食べられるよになり)、スッポンに後ろ足があと二本ひっついて(すっぽんの足がたくさん食べられるようになって)くれればいいのに、とだけ願っておりますのじゃ。ひいっひっひっひっひい・・・」

とつねづねに人に語っていたそうである。

そういえばスッポンですが・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

スッポンのお話はまた次回。「在園雑志」巻四より。

ほんとにどうしてこういう「料理法」を考えるのでしょうね、このひとたちは。

 

表紙へ  次へ