平成22年10月13日(水)  目次へ  前回に戻る

晋の大博物学者・張華(字・茂先)大先生の記述しておみえのことをお読み申し上げることをなさった。(←官房長官的表現法)

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すると、(昨日に続き、)麒麟が決して珍しいものではないことを証明する記録を見つけました。

○麒麟闘而日月食、鯨魚死而彗星出、嬰児号而母乳出、蚕珥絲而商絃絶。

麒麟闘いて日月食し、鯨魚死して彗星出で、嬰児号して母乳出で、蚕絲を珥(じ)して商絃絶す。

麒麟が相戦うと、日食・月食が起こるのである。

大いなる魚が死ぬと、彗星が現れるのである。

みどりごが泣きわめくと、母親の乳が出るようになるのである。

かいこが糸を吐きだしはじめると、商の音の絃が切れる。

「珥」(じ)は「咡」(じ)(=ささやく、口の中でもごもごする)の意。「商」は五音(宮・商・角・徽・羽)の一で、調によって絶対音階は変わるが、理念的には「秋」を象徴する音であって清らかで悲しみを帯びる、ということになっております。かいこが糸を吐きだしはじめると、弦楽器の弦は代わりの糸が間もなくできるので、自然に切れてしまうのだ、という。―――ほんとうでしょうか。

実験したくなってきますが、それはさておき、上記のように「麒麟」が相戦うと日食・月食が起こる、ということですから、日食・月食ごとに少なくとも二頭の麒麟が出会っていることになる。そこそこの頭数が常にいないとこんなことは在り得ないと思われますので、麒麟常在説の補強となります。

以上。

ためになりました。

え? あまりためにならない?

それでは大サービスでもっとためになりそうな話をしますので、耳の穴かっぽじって聞け。(←官房長官的表現)

○羽氏国人、有翼。飛不遠。

羽氏国人は翼あり。飛ぶも遠からず。

羽氏国という国のひとには翼がある。飛ぶことができるが、あまり遠くまでは飛べない。

どうですか。こんなこと普通の生活してても知ることはできません。そんなことを知ることができたのです。たいへんためになりましたね。

え? あまり役に立たない? もっと役に立つことを知りたい?

○夏禹行河、見長人魚身。曰、我河精也。

夏の禹、河を行くに、長人の魚身なるを見る。曰く、我河精なり、と。

夏の初代王である禹が黄河をわたっていたとき、からだが魚の大きなひとを見た。

そのひとは言うた、「わしは黄河の精霊なんじゃ」と。

ああ、役に立つ話だなあ。これで、黄河をわたっていて、からだが魚になっている大きなひとを見かけたとき、相手が何も言わなくても「黄河の精霊だあ」とわかるのです。すごい役に立つ。

これでも役に立たん知識だと思わねばならない社会は社会の方がおかしいので、あなたがそんな社会に住んでいるのだったら、社会から逃げ出した方がよろしいように思います。

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これらの役に立つ知識はすべて張華さまの「博物志」に書いてあるのである。三世紀のひとが知っていたことなのに、現代人が知らないなんて恥ずかしいことだ。

 

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