平成22年3月2日(火)  目次へ  前回に戻る

公孫儀が魯の国の相(大臣)となった。

国中のひとびとが彼に贈り物をしようとした。彼が魚を好物にしているのは以前から有名であったから、多くのひとは贈り物に魚を選んだ。

しかし、公孫儀は贈り物の魚を受け取ろうとしなかった。一方で、生肉や干し肉の贈り物は受け取ったのである。

そこで、住み込みの若い衆(「弟子」)が訊ねた。

夫子嗜魚而不受者、何也。

夫子魚を嗜みて受けざるは、何ぞや。

先生は魚がお好きです。なのに魚だけお受けとりになろうとなさらぬ。どういうわけでございますか。

公孫儀答えて曰く、

夫唯嗜魚、故不受也。

それ、ただ魚を嗜む、故に受けざるなり。

「魚が好きだからな。だから魚だけ受け取らないでいるのだ」

「? ? ?」

「魚が好きだから、

夫即受魚、必有下人之色。有下人之色、将枉于法。枉于法、則免于相。

それ即ち魚を受くれば必ず人に下るの色有り。人に下るの色有ればまさに法を枉(ま)げんとせん。法を枉ぐれば、すなわち相を免ぜられん。

ほいほいと魚を受け取れば、必ずそのひとに感謝する思いが顔色に表れてしまうであろう。顔色に表れれば、(相手も期待するようになり、いずれ)きまりに外れたことをしようとしてしまうであろう。きまりに外れたことをしてしまうと、わしは大臣を辞めさせられてしまうであろう。

そうなれば誰も魚を贈ってはくれなくなるだろうし、自分で買う財力もなくなってしまう。とりあえず大臣でさえいれば自分で買うことだけはできるから、人の贈ってくれる魚は受け取らないのである」

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「韓非子」外儲説右下より。

なるほど。さすがいにしえの賢者のおっしゃることはタメになるなあ。

魚の代わりにお金であったらどうであろうか。お金が好きでないひとは、お金を受け取っても大丈夫なのではなかろうか。

 

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