３０．１．２６

平成３０年１月２６日（金）　　目次へ　　前回に戻る

逃亡先から。

腹減斎もいなくなったのだなあ。遠隔地からの更新ができればわしも老骨に= 鞭打って復活・・・とは思うものの、あまりにも現世が怖いので止めときます。

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むかしむかし。

太原の龐企というひとのご先祖・龐某が、無実の罪に問われて= 牢獄に入れられた。

不堪拷掠、誣伏。

拷掠に堪えず、= 誣に伏せり。

拷問に耐えられず、とうとう無実のことを自白してしまった。

死罪に決まり、あとはその決裁が都から戻ってきて執行されるのを俟つだけ= になった。

絶望の中、牢の中で寝転がっていると、

有螻蛄行其左右。

螻蛄（ろうこ）= のその左右を行く有り。

「螻蛄」はオケラです。競馬に負ける方ではなく、虫の方の。

オケラが牢の中をもそもそ這っているのを見た。

龐はオケラに言った。

爾有神、能活我耶。

爾、神有ればよ= く我を活するや。

「おまえにすごい力があって、わたしを救い出してくれんものかな= あ」

そういって食事の残りをその前に投げ与えたところ、

螻蛄食之、而去。

螻蛄これを食ら= いて去れり。

オケラのやつは、それをむしゃむしゃ食って、どこかへ行ってしま= った。

自分の体よりも大きいメシの塊を食っていったのである。

次の日、またオケラが現れた。

形体稍大。

形体、やや大な= り。

体つきが少しでかくなっているようである。

「こんなに大きくなるものなんだ」

龐は不思議に思いながら、またメシを分け与えた。

如此数十余日、螻蛄忽= 大如豕。

かくの如きこと= 数十余日、螻蛄たちまちに大なること豕のごとかりき。

こんなふうに二十日ぐらい経つと、オケラはいつの間にか、ブタの= ような大きさになっていた。

「でかくなったなあ」

「ぶう」

ついに龐が処刑される朝、

螻蛄忽掘壁成大孔、乃= 破械而去。

螻蛄たちまち壁= を掘りて大孔を成し、械を破りて去れり。

オケラは牢の壁を掘って大きな穴を空け、さらに足かせを壊してく= れて、どこかへ去ってしまった。

龐はこうして脱獄することを得、やがて財を成して子孫も繁盛したの= である。

其家因以四節祀螻蛄於= 衢。至今猶爾。

その家、因りて= 四節を以て、螻蛄を衢に祀る。今に至るもなお爾（しか）り。

その家では、以来、四季の節句ごとに、オケラさまを大通りの四つ= 辻でお祭りしている。現代（晋の時代）に至っても、その習いを続けているのであ�= 驕B

オケラがブタになるなら、カボチャも馬車になるであろう。四つ辻が祀りの= 場であった古い時代の、そのまたむかしの物語である。

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「捜神記」巻二十より。

わしもこの龐某のように危ういところまで追い詰められて、なんとか= 逃げ出して今があるのじゃ。俗世に戻ってやつらに見つかるようなことをするもの�= ｩ。うっしっしっし・・・。