平成25年6月17日(月)  目次へ  前回に戻る

 

いにしえの賢者曰く、

行路難、行路難。人の世を行くは蜀道を登るより難し。

行く道は困難である、行く道は困難である。現実の世の中を生きていく道は、四川の山岳地帯に登って行く道よりも、さらに困難なのだ。

と。

世の中にはどんなところに困難が潜んでいるか、知れたものではないのです。

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宋の時代のこと、江西・分寧の陳荘という村で

有方石二尺許。

方石、二尺ばかりなる有り。

一辺二尺ぐらいの立方体の石が見つかった。

「これは珍しい形じゃのう」

田父以椎藁。

田父以て藁を椎す。

見つけた百姓おやじは、ワラを打つための椎に使っていた。

ところが、

久之、夜聞鷄鳴。

これを久しくして、夜、鶏鳴を聞く。

しばらくすると、夜中にニワトリの声が聞こえるようになったのである。

「こんな夜中になぜ?」

と声を便りに探すと、声の主であるニワトリらしい鳥の影が、くだんの立方体の石の中に吸い込まれるように消えて行ったのであった。

「これは怪しい」

と百姓おやじは村長に届け出た。そこで、ひとを集め衆人の環視する中で石を割ってみることにした。

剖石、中有二鷄。一雌、一雄。

石を剖(さ)くに、中に二鷄あり。一は雌、一は雄。

石を割ってみると、中から二羽のニワトリが出てきた。一羽はメンドリ、一羽はオンドリであった。

・・・そうです。

また、山西から宮中に不思議な石が届けられてきた。

この石、

石中有鵲、毎天将旦、咸聞其噪声。

石中に鵲有り、毎天まさに旦ならんとするに、みなその噪声を聞く。

石の中にカササギが入っているとのことで、たしかに毎日、夜が明けるころ、誰もがその石の中から鳥がさわぐ声を聞いたのであった。

・・・そうです。

いずれにしろ、これらの石が発見されて間もないうちに、北宋は滅んでしまった。

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明・徐応秋「玉芝堂談薈巻二十七より。石の中から鳥の鳴き声が聞こえたりしたら、困難な事態が起こる悪い兆しである・・・かも知れない可能性があるので気をつけましょう。

 

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